暗闇の囚人

After Dark

フィリップ・マーゴリン / 早川書房 / 99/05/31

★★★

マーゴリンにしてはましな方

 1996年に単行本として出版されたものが文庫化された。20ページほど読み進めるまで、単行本が出た時点で読んでいたことに気づかなかった。結局最後まで読んだ。

 『黒い薔薇』『炎の裁き』と比べるとましな方。実際、この『暗闇の囚人』を初めて読んだときには目新しいリーガル・サスペンスの書き手が現れたと思って注目しようと思ったことを覚えている。ネタがばれるので詳しくは書かないが、この本で使われているトリックはなかなか珍しいものであり、リーガル・サスペンスのテーマとして豊かな鉱脈になると思えるほど微妙な問題をはらんでいる。リチャード・ノース・パタースンとか(最近の)スコット・トゥローならば、もっとしつこい描写をして、感動的な小説に仕上げたかもしれない。最初に本書を読んだときには、この描写が「しつこくない」のは戦略だと思った。謎解き小説としての要素を強くするために意図的にレッド・ヘリングを随所に置いているのだが、問題となる描写がしつこくなると、レッド・ヘリングの機能が低下するという判断があったのではないかと思ったのである。実際、このあたりのトリックの仕掛け方は見事で、中心人物の一人である最高裁判事調査官→弁護士事務所のアソシエイトのトレーシー・キャバナのからませ方は素晴らしい。

 しかし、その後のマーゴリンの小説を読んでみると、突っ込みが淡白だったのは、戦略というよりもこの人の資質だったんだということがわかった。それがわかった時点で本書を読み返してみると、やっぱり不満が溜まる。

1999/9/21

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