フロスト日和

A Touch of Frost

R・D・ウィングフィールド / 創元社 / 97/10/17

★★★★

きわめて先鋭的なミステリ小説

 前作『クリスマスのフロスト』も面白い小説だったが、この2作目もとても面白い。

 この小説は、次のような技巧の実験をしている。つまり、複数の事件が並行して進行しているときに、それらの事件を解決しようとする警官が、それぞれの事件へのアプローチをすべて間違えるが、それぞれのアプローチが別の事件の解決を導き出したので、結果としてすべての事件が無事解決される、ということ。事件が論理的に解決されないという手法はときどき見られるけれども、この『フロスト日和』ほど徹底的に各事件を絡み合わせた例は初めて読んだ気がする。そしてもちろんのこと、これは探偵小説のアンチテーゼである。

 もう一つ。主人公のフロスト警部は、結果として善人かつ有能な人として描かれるわけで、その背後には軽い(シリアスでない)ユーモア・ミステリという枠組みがある。この枠組みがシリアスな警察小説であったなら、上記のようなアンチテーゼは、「警察の仕事とは実はこういう場当たり的なものなのだ」という1980年代から始まった新しい警察小説の流れに乗ることになる。この『フロスト日和』が実際にどこに位置するかは難しいけれども、フロストの泥臭さの対極にあるアレン警部の描写が比較的好意的なものなので、全体としては後者の「新しい警察小説」に少し近くなっている。つまり、フロストもいて、アレンもいて、全体として警察がなんとか機能していくという世界観である。

1998/4/13

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