バイリンガル・ジャパニーズ

帰国子女100人の昨日・今日・明日

佐藤真知子 / 人文書院 / 99/09/20

★★★

どうも著者の力不足のようだ

 帰国子女100人の現在をインタビューを通して探るという趣旨の本。著者はオーストラリアに長い期間住み、自ら外国で子供を育てた経験のある人で、このような「外国生活本」をいくつも書いている人のようだ。

 期待して読み始めたのだが、(1) インタビュー対象者がほとんど女性である、(2) 滞在先がほとんど英語圏の先進国である、(3) 客観的な分析ができていない、(4) 著者の先入観が強すぎる、などの理由からあまり意味のない本になってしまっていた。残念である。

 タイトルは『バイリンガル・ジャパニーズ』であるが、この本にはバイリンガルになった人の例はほとんど出てこない。私は、外国語と日本語をネイティブ・スピーカーに近い発音で喋れても、「漢字に弱い」というような人をバイリンガルと呼ぶべきではないと思う。この基準で見ると、本書にはちゃんとしたバイリンガルと思われる人が1人か2人しか登場しないのだ。そのことから逆に、「一般的な帰国子女はバイリンガルにはならない」という結論が導き出せてしまうかもしれない。実際、本書に出てくる大多数の例は、「帰国後、日本社会に順応して外国語を忘れていまは後悔している」というタイプと、「日本語と外国語をそこそこ話せるが、どちらも完璧とは言いがたいため、業務で苦労している」というタイプのどちらかに収まるのである。もちろん、これは対象者のほとんどが女性だというバイアスがかかっているからかもしれない。

 しかし、帰国子女がバイリンガルになるかどうかなんてのは些細な問題で、私の興味は彼らが日本社会にどのように適応しているか(あるいは適応していないか)という点にある。これを本格的に論じるためには、男女両方を対象にし、滞在先の国のバラエティを増やさなくてはならないだろう。実際、滞在先がどのような国だったかによって、その国における経験も、帰国してからの経験も、かなり異なるのだ。なお、全日制の日本人学校がある地に3年ほど住んで日本人学校に通学した、というような経験は、九州生まれの子が北海道に3年間住んだというのとほとんど変わらないので、サンプルから外さなくてはならない。

1999/10/6

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