幇という生き方

中国マフィア日本人首領の手記

宮崎学 / 徳間書店 / 99/08/31

★★★★★

戦後の大陸浪人

 著者は、マカオで出会った男、竹村英雄から15冊に及ぶ大学ノートを渡され、自分が死んだらその内容を発表してもよいと言い渡される。そして、竹村がどうやら死んだらしいということを知り、著者はこれをベースに『血族』という小説を書いたが、手記をベースにしたノンフィクションとして書いたのが本書である。

 竹村は1935年に日本で生まれたが、養父が軍属として、満州を起点にしてアジア全域で活動していた経緯から、中国人との間に強い絆が生じた。その後、成長して愚連隊となった竹村は、ヤクザ組織との衝突から日本にいられなくなって、中国人の縁を頼ってベトナムに脱出する。そこで、中国マフィアの青幇と紅幇の両方に加入して、ベトナム戦争時のベトナムやクメール・ルージュの支配下のカンボジアで経済的・軍事的活動を行う。

 興味深いのは、ベトナム戦争時の活動に、大東亜戦争の終了後も東南アジアに居残っていた日本軍の敗残兵が何人か関わっていたということである。その意味で、竹村は「戦後派」ということになる。いわゆる大陸浪人と言われていた人々の系譜は、日本の敗戦時に完全に途切れたわけではないということが確認できる。

 まことに途方もない話で、既存の知識のどこに位置づけていいのかわからないのだけれども、もしかしたらこれはいわゆる「華僑のバイタリティ」というやつで、竹村という日本人はそれと交わったということなのかもしれない。

 実際に描かれているエピソードは強烈なもので、そこらの冒険小説よりもずっと凄い。特にアジアを舞台にした冒険小説ファンにとっては必読の書だろう。

1999/10/12

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