北朝鮮に消えた友と私の物語

萩原遼 / 文藝春秋 / 98/11/30

★★★★★

元赤旗記者による告発

 著者は赤旗記者として平壌に派遣されていたが、スパイ容疑で国外追放されたという経験を持つ。その後、1989年に赤旗をクビになり、フリーランスとして『朝鮮戦争 - 金日成とマッカーサーの陰謀』(1993)を書いた。1989年の『ソウルと平壌』とあわせて朝鮮半島三部作。

 本書は、尹元一(ユン・ウォニル)と金竜南(キム・ヨンナム)という2人の在日コリアンを軸として、済州島(チェジユド)の四・三事件、戦後の在日コリアンが置かれた状況、そして北朝鮮への帰国運動を、自らの日本共産党党員としての経歴と絡めながら描いた本である。著者はその経歴からわかるように、朝鮮民主主義共和国、朝鮮総連、そして日本共産党がとってきた方針にいまでは批判的で、この本を書いたせいで殺されるのではないかと怖れている。金竜南(別名、金民柱)は、著者および小川晴久とともに「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の共同代表をつとめている。

 いろいろな面で魅力のある本で、すべてのページが貴重なのだが、特に重要なのは、北朝鮮への帰国運動を金日成の陰謀であるとし、この陰謀に朝鮮総連と日本共産党がどのように関わったかを具体的に描写しているところだろう。また、尹元一と金竜南という2人の済州島出身者の記録から、1948年に起きた済州島の四・三事件に押されるようにして日本に密入国してきた在日コリアンというものがどのような存在なのかということを垣間見ることができるのも貴重である。

 政治的な偏りはあるが、それだけに『コリアン世界の旅』よりもずっと面白い。

1999/10/12

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