私という旅

ジェンダーとレイシズムを越えて

リサ・ゴウ、チョン・ヨンヘ / 青土社 / 99/11/21

★★★

興味深いのだが答えは見えない

 著者のリサ・ゴウはフィリピン人。チョン・ヨンヘ(鄭[日英][恵])は在日コリアン。実際にはリサ・ゴウが語る言葉をチョン・ヨンヘが記録したという形の本で、『現代思想』に1997年から1998年にかけて掲載された原稿をまとめたもの。

 チョン・ヨンヘは社会学・女性学を専攻する学者。リサ・ゴウの著者紹介文を以下に引用(帯より)。二人は広島に住んでいたときの「友達」である。

リサ・ゴウ
1952年、フィリピン生まれ。69年フィリピン大学入学。90年メソジスト教会の宣教師となり、出稼ぎフィリピン人のサポートをする。また、花嫁として日本に嫁いだフィリピン女性などのカウンセリング等の活動をする。現在、米国で暮らしている。

 リサ・ゴウの立場から、在日フィリピン人が直面している問題を、レイシズムとセクシズムの問題意識から告発・批判するという本である。第1章の「六十年代フィリピンから九十年代日本へ」では、当人も深く関わったと思われる60年代フィリピンのナショナリスティックな解放運動とフェミニズムの様子が語られている。それ以降の章は、もっぱら彼女の日本での体験を通して、人種差別と性差別に被害者の立場からどう対抗していくべきかという話が語られる。

 個々の事例は興味深いが、主張はまあ普通という感じだ。日本でキリスト教の宣教師をやっている人間に「レイシズムの内面化」とか言われても困るし、英語を使っている国からやってきた人に「権力資源としての言語」みたいな言い方で日本語を批判されても困るんだけれども、まあそういう自明とも思える矛盾に気づけないほど、在日フィリピン人の置かれている環境が苛酷なんだと解釈しておこう。もっと気になるのは、あちこちに見え隠れするエリート主義(というか知的能力信奉)で、「フィリピン大学」とか学生活動家としての経歴がどれほどの意味合いを持っているのかはわからないのだが、著者の胸の内には、エリートとしての自分と、そうでない多くの在日フィリピン人との間の乖離が解決しがたい形でわだかまっているように思える。もちろんPCじゃなきゃならないから「多様性」などという言葉も持ち出すけれども。

1999/10/31

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