一人勝ちの経済学

大前研一 / 光文社 / 99/08/30

★★

結局何を言いたいのかよくわからない

 「一人勝ち」とは最近いわれているいわゆる「メガヒット現象」のこと。帯には「NY株、ビル・ゲイツ、プレステ、東京三菱銀行から宇多田ヒカルまで」とあるが、これらはかなり違ったメカニズムで生じている現象だと思うぞ。で、ほとんどの部分では、消費者はこういう現象に賢く対処するべきだと述べておきながら、最後の方になって、このようなブーム現象を人為的に引き起こすための「戦略」を生産者に向けて書いていたりして(といってもみんなこんなことは承知しているとは思うぞ)、どうにも首尾一貫しない内容ではあった。

 最後に読んだ大前研一の本は『平成維新』だったと思うから、ずいぶん久しぶりだった。今回、『21世紀維新』と併せて本書を読んだ感想は、やっぱり東京都知事選でこともあろうに青島幸男に負けたということが相当な影響を与えたんではないか、ということだ。『平成維新』の頃の彼には、都市の無党派の支持票を集めて政治家になろうという意思が強く感じられた。だから良い意味で進歩的な政策を真面目に提案するという姿勢があって、大局を見ていない非現実的な政策であるという批判は多く受けたにせよ、たとえば県知事ぐらいならやらせてもいいんじゃないかという雰囲気もありえたのではないかと思う。しかし、今回読んだ2冊は、日本の典型的な「エコノミスト本」と変わるところがなかった。こういう転回はある意味で典型的なのかもしれない。

1999/11/7

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