われ万死に値す

ドキュメント竹下登

岩瀬達哉 / 新潮社 / 99/09/30

★★★★★

どのように評価したらいいのかわからないが、とにかく支持する

 『新聞が面白くない理由』の岩瀬達哉が、『新潮45』に1998〜99年にかけて連載した記事をまとめたもの。竹下登に関するノンフィクション。タイトルは、1992年11月26日の衆議院予算委員会で、東京佐川急便問題で証人喚問を受けていた竹下が、野党議員の最後の質問に答えて、次のような心情を吐露したことによる。「私という人間の持つ一つの体質が今論理構成されましたような悲劇を生んでおる、これは私自身顧みて、罪万死に値するというふうに私思うわけでございます」。これは秘書だった青木伊平の自殺を含めて、竹下の政治家としての経歴の中で、何人もの関係者が不幸な目に遭っていることに言及したものと考えられる。本来こんなことを言わない人であるだけに驚きだったわけだが、彼がこれを言ったからといって何も変わらないのがまた面白いことではある。

 竹下の政治家としての出発点から、現在の小渕政権にいたるまでの足跡を概観している部分はとても興味深いが、「ホメ殺し」の皇民党事件に関連する記述には岩瀬達哉のスクープが含まれているらしい。皇民党のその後の隆盛ぶりから考えて、あの「ホメ殺し」事件は明確に竹下に狙いを絞った佐川清による攻撃であると考えてよいと思われる(佐川と皇民党の間に、事前にどの程度の取り決めがなされていたのかという点については言及を避けているが、百歩譲っても両者が以心伝心の関係にあったことは間違いなさそうだ)。傍系のエピソードとして、イラクでのアントニオ猪木と皇民党の微笑ましい交歓の様子が描かれている。

 そこからの連想だが。日本の政治を扱うメインストリームのジャーナリズムは、プロレス雑誌によく似ている。プロレス雑誌の側が真似をしているというのではなく、ルーツを共有しているということなんだろうと思う。岩瀬達哉という人は、そういう何というか土着の臭いのする泥臭いジャーナリズムに風穴をあけるという効果をたしかに持っていて、本書も自民党の有力政治家という泥臭い主題を、一般人(新日本プロレスの選手の「内部抗争」とかに関心を持っていないような)にもわかりやすい言葉で語ってくれている。こういう態度を保ってくれる限り、この人がどんな主題を取り上げても読み続けたいと思う。たぶんこの本はメインストリームの政治記者に言わせたら「大したことない」内容なんだろうと思うが、こちらが読む気にならないと情報は伝わらないのだ。

1999/11/7

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