ざこ検事の事件簿

今井秀智 / 共同通信社 / 99/09/22

★★★

日本の検察の一極での限界を浮き彫りにしたとでもいおうか

 著者は検事をやった後、木村晋介法律事務所に勤務しているいわゆるヤメ検。本書の最後のところから引用する(237ページ)。

「検事は、事件の大小じゃなくて、人に熱くなる方ですね。」
僕が検事を辞めるとき、検察事務官が言ってくれた言葉だ。この言葉は先の似顔絵とともに、僕にとって最高のはなむけになった。

 まあそういう感じの人情派熱血検事が体験したことを綴ったエッセイ。そのなかで、検事という権力を得た人間がいかに傲慢になるか、そのような場での人情がどのように抑圧的に働くか、といったことが描かれる(もちろん本人はそのことにはまったく気づいていない)。金八先生の検事版といえばわかりやすいか。

 この本を読んで、警察/検察による取り調べに弁護士を同席させる権利を認めることがいかに重要かということを改めて思った。たとえば106ページから始まる「桜の思い出」では、強盗殺人容疑で逮捕された40歳半ばの女性に対して苛酷な取り調べを行い、その途中で桜の枝を取調室に持ち込んで「ほろりとさせる」ことによって落としたというエピソードが、美談として語られている。こういうようなことを検事本人が美談として記憶できるという状況そのものを変えなくては、捜査の過程での人権侵害や冤罪は永遠になくならないだろう。恐ろしいのは、そのことに、そこそこまっとうな文章も書ける著者がぜんぜん気づいていないことだ。

1999/11/7

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