自民党の研究

あなたも、この「集団」から逃げられない

栗本慎一郎 / 光文社 / 99/10/05

★★★★

まあ本人がいうようにフィールドワークということならいいかという感じ

 自民党という権力集団の内実が、「衆議院議員として五年間「潜入」してきた私のフィールドワークによって明らかにされる」(5ページ)という本。著者は傍から見れば、「政治に色気を出したはいいが結局うまくいかなかったので盗聴法案に反対するという言い訳で自民党を離党した文化人」ではあるのだが、この本はフィールドワークとしてそれなりの価値があるだろう。これはこのところときどき見掛ける、ウォール・ストリートの投資銀行とかシリコン・バレーのコンピュータ関連会社に就職して「脱落」した人々の手による回想記に似ている。根本から否定できるものではなく、むしろどちらかといったら支持したくなるような価値観が支配している世界に足を踏み入れたものの、その価値観が極限まで押し進められた結果生じる世界に堪えることができなくてドロップアウトする、というものだ。もちろんドロップアウトしたのだから純粋な意味での内部報告とはいえない。その点でスコット・トゥローが大昔に書いた『ハーヴァード・ロースクール』は面白かった。一応ロースクールを卒業して法律家になったわけだから。

 特に5章の「自民党を動かす「見えないシステム」とは」では、自民党内での意思決定プロセスが描かれていて興味深い。著者は自民党固有の特質に、(1)「一定の数を持ち、一定の手続きを踏めば過去の決定もくつがえせる」と(2)「タブーに触れなければ、意外に自由な言動が保障される」という2つがあると述べる。

 (1)の原則は、次の3つの小原則に支えられている。(a)「一事再々理」、すなわち一事不再理とは反対に、何度でも同じことを審理しうる。(b)「党内のあらゆる委員会や調査会には、誰が出席して発言してもよい」、すなわち会社組織でいえば役員会に平社員が自由に出席できるようなもの。(c)「すべての決定は、全会一致でなくてはならない」、すなわちどうしても反対したい者は欠席することによって(というよりも欠席を他人から強制されることによって)恩を売る。(2)の原則については、まあ普通の話。自民党の政治家から「失言」や「暴言」を行う人が出てくるのは、こういう状況に支えられている。ある意味では歓迎すべき傾向ではあるんだが。

 ところでこの意思決定の過程はたしかに「自民党的」といえるのかもしれないが、政党としての意思決定をする際の駆動要因が「恩の貸し借り」であるという根本原理自体はかなり普遍的なものなのではないかと思う。どこの国でも政党に所属する議員たちはそういうことをやっているだろうし、その過程が不透明になる(程度の大小はあれ、貸し借りを行った結果しか見えない)のも同じだろう。違うのは(というか理想的状況からのずれが生じているのは)、各議員が選挙区の人々に対して個々の行動のアカウンタビリティを持っていないため、全会一致という形をとることができる(逆にいえば、どうしてもアカウンタビリティを取りたい人は造反とか離党などという手段で旗幟を鮮明にしなくてはならない)ということと、自民党が政権を独占しているために、このような意思決定プロセスの非効率性が競争にさらされないということだろうか。

1999/11/7

 著者のwebサイト

 何か恥ずかしい外し方をしているような気がするが、え〜、全体として「可愛い」という風に位置づけることにした。小渕首相が「かっわいー」というような意味合いで、女子高生に人気が出る可能性が十分にあるのではないか。

1999/11/26

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