だれも書かなかった「部落」

寺園敦史 / かもがわ出版 / 97/05/28

★★★★

ローカルな話題ではあるが、それだけに話が細かくて面白い

『「弱者」とはだれか』からの流れで買ってみた。

 京都市職員労働組合が発行している月刊誌『ねっとわーく京都』に連載されたものを中心にしたノンフィクション。新聞記事のような臭みがあるが、一冊の本としてうまく編集されている。掲載誌の性質を反映して、ほぼ完全に京都市ローカルの話題なのだが、それだけに事態の描写が細かいところにまで及んでいて面白かった。

 本書は京都市で行われている同和行政が生み出した矛盾に焦点を当てたルポルタージュで、いちおう中立の立場に立ってはいるが、基本的に全解連を支持し解放同盟を批判するというスタンスである(まあそれは仕方ないことだが)。個々の事例は非常に面白く、京都市清掃局の局員が起こしている不祥事を列挙したところなどは圧巻だった。

 感想は。結局、政治的な活動は利権を生むのであり、適切なチェックが行われないと腐敗する、というレベルで理解するのがよいと思う。地方行政のレベルでの利権を巡るローカルなドロドロした話は、別に解放同盟絡みでなくてもいくらでもある。しかし、「部落問題」という関心から見ると、不適切な同和行政が部落差別を再生産しているという事情は重要であり、本書はそのような再生産がどのように起こりうるかを詳細に報告していてとても興味深い。

 これは中世における被差別部落の位置づけという問題とも関連するかもしれない。被差別部落が特殊な職業の担い手であったということは、そこに利権/特権が発生していたということも意味する。このことが逆に周囲からの嫉妬を産み、差別的な意識を作り出すという(時期と場所によっては起こっていたと推測される)プロセスは、本書で描かれているような同和行政の状況と同じものだったのかもしれない。

 なお、130ページに自民党の野中広務が「同和脱税」の問題について積極的に発言しているとの記述がある。本書では「ここでは野中氏の思惑は置こう」としているが、思惑をぜひとも知りたいところだ。野中はさまざまな問題についてちょっと意外な動きを見せることが多くて面白い。

1999/11/14

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