裁判官は訴える!

私たちの大疑問

日本裁判官ネットワーク / 講談社 / 99/09/18

★★★★

不思議な感じに大人

 裁判官12人によるエッセイ集。まえがきから引用(4ページ)。

本書は現役の裁判官が判例評釈や学術論文を除けば、広く一般に向け、自ら名乗って自分の仕事、生活、さらには現在の裁判所にとっての課題を、時には批評もまじえて綴ったおそらくは初めての一冊である。

 裁判官一般は、青年法律家協会(青法協)問題が紛糾して以来まったく無口になったという印象があったが、最近になって寺西裁判官が盗聴法案への反対の声を上げ、反対集会に出席して発言したことを理由として戒告処分を受けるという事件があった。本書はそこまで過激なことはしないが何か発言したいと思っている裁判官たちが結成した「日本裁判官ネットワーク」のプロジェクトである。

 本書の執筆者には、年齢と裁判所の中での(推測される)地位という点で偏りがある。要するに、前途に洋々たる未来が開けている(かもしれない)人は参加していない。まあそれも当然のことなんだろうけれども、若者たちが軟弱だからわれわれがやるという執筆陣の姿勢は頼もしいとも言える。

 しかしそのような偏りの結果、本の内容がなんとも「大人っぽい」ものになっていて、『裁判官は訴える!』というタイトルから予想される内容とのずれが驚きではあった。たしかに裁判官も普通の人間なんだという印象を広める効果はあるかもしれないが、申し訳ないけど言わせてもらえれば、これは「普通の、ライン職から外れた中高年サラリーマン」の印象に近い。ただし、この年齢層の労働者ということで考えれば、裁判官という職はきわめて労働量の多い職であり、アウトプットも多いと思われる。

 今後、『アメリカ司法戦略』で主張されているような司法のアメリカ化が進むのであれば、裁判所がやらなければならないことははっきりしている。裁判の効率化(民事訴訟の和解の重視、刑事裁判の有罪取引を含む)と裁判官の数の増大(法曹一般の規制緩和を含む)である。本グループが示唆している陪審制や参審制などの改革はまた別の話だが、アメリカ化に伴ってそのような制度が必要となってくるという局面も考えられる。

 私は素人なので、このような変化の提言を裁判官のグループが行うということにどれほどの意味があるのか、また家裁や地裁の裁判官がどれほどの力を行使できるのかを知らないのだが、今後の活動に注目することにした。

 日本裁判官ネットワークのwebサイト。

1999/11/19

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