南京大虐殺否定論の13のウソ

南京事件調査研究会 / 柏書房 / 99/10/25

★★★★

予想よりもはるかにまともな本だった

 大虐殺派による、否定論への反論の書。Iris Changの"The Rape of Nanking"の翻訳出版の件で問題に巻き込まれた柏出版。この件の経緯については『『ザ・レイプ・オブ・南京』の研究』に(反対の立場にいるはずの人たちの手による)解説がある。柏出版が実際にどのような思惑を持っているかは不明だが、傍から見ると、Iris Changに対する反撃という機能を持たされた本であるという印象は避けがたい。

 執筆者は、井上久士、小野賢ニ、笠原十九司、藤原彰、本多勝一、吉田裕、渡辺春己。本書は予想したよりもはるかに上品で、普通の人にもお勧めできる内容だった。以下、いくつかの感想。

 南京大虐殺否定派/自由主義史観派にナショナリスト/愛国者の称号というか地位をとられてしまったのは中〜大虐殺派/自虐史観派の大失敗だと思う。うまくやれば90年代の初頭あたりにうまく論調を修正して、自らを主流のナショナリスト/愛国者に位置づけることもできたはずだ。もちろん昔からの人々にはいろんなしがらみがあるから難しいのだけれども、いま必要とされているのは「中虐殺/自虐史観/従軍慰安婦に対する補償の反対派/軍事的リアリスト/愛国者」という信念のセットを持った現代的なリベラルである(なお、本書を見る限り、従来の中虐殺派と大虐殺派はほぼ同じものになったと考えていい気がする)。

 虐殺否定論者の議論の中で一番問題だと思うのは、日本軍がやったと彼らも認める行為を正当化するそのやり方である。本書では第9章「国際法の解釈で事件を正当化できるか」で吉田裕が言及しているが、簡単にまとめるならば、彼らの正当化の論理は、それを認めてしまうと、日本の側が被害を受けた過去の不当な事例も正当なものとして認めなくてはならなくなるし、今後の日本国のとりうる外交/戦争戦略にも制約を作ってしまうという、はなはだ非国民的なものだと思う。もちろんつねに例外事項を設けながら巧妙に議論を進めることは可能かもしれないが、普通の理性と感情を持つ日本人が信じられるような一貫性のある理念をそれをベースにして作り上げるのはとても困難だ。

 われわれは日本が過去に行った行動を、一貫性のある形で解釈/理解する必要はないのだ。重要なのは、今後の行動指針であり、過去の解釈なんかはその指針に照らし合わせてアドホックに変えればよい。もともと歴史はそういうものだ。

1999/11/19

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