文久三年御蔵島英語単語帳

小林亥一 / 小学館 / 98/11/10

★★★★

少々マイナーな話題ではあるが、情熱のこもった本

 以下、帯より引用。

文久三年(一八六三)夏、四八三人乗りの米国船ヴァイキング号が、伊豆御蔵島に難破した。幕末、動乱期の一孤島に起こった「国際事件」の顛末と、島役人・栗本市郎左衛門が独力で作った『英語単語帳』を全公開。

 この事件の顛末の解説、栗本市郎左衛門が付けていた記録である『西洋黒船漂難一件記』の原文と現代語訳、ヴァイキング号の乗組員のカートライトの回想記、栗本市郎左衛門が作った英語単語帳(著者による注釈付き。写真複製)、その他の資料(特にジョン万次郎の作った単語帳との比較が興味深い)から構成されている。

 資料としての性質の強い、少々マニアックな内容なのだが、著者がこの栗本市郎左衛門という人物に寄せている情熱のこもった関心がストレートに伝わってくる好著だった。小さい島の役人でありながら、黒船の漂着という異常事態に適切に対処しただけでなく、単語帳を作るというような向学心/好奇心を持っていたこの人物は、江戸時代の日本の強靭さを体現していると言うべきか、「日本の官僚」の原型であると言うべきか、まあいろんな思いを喚起させるキャラクターではある。

 単語帳に書かれている発音の評価は、そのときやってきたアメリカ人たちがどのような発音をしていたのかということを調査しないとまずいんではないか。

1999/11/26

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