誰がテポドン開発を許したか

クリントンのもう一つの"失敗"

Betrayal: How the Clinton Administration undermined American Security

ビル・ガーツ / 文藝春秋 / 99/11/20

★★★★

政治的に偏っているが、迫力があることは認めざるをえない

 著者のビル・ガーツは『ワシントン・タイムズ』の軍事専門記者。本書のタイトルは日本で売るための方策で、実際にはクリントン大統領の外交政策全般を扱いながら、大統領のロシア、中国、北朝鮮、イラク、イランといった「敵国」を利する行動を非難する本である。この手の話題は、どのていど本気に受け止めるべきなのかわからなくて困ることが多いが、クリントンに対する攻撃に利益がある共和党保守派だけでなく、CIA、国防総省、国務省の不満分子たちからもたっぷりと情報を集めているらしい本書はそれなりに圧倒的で、記述が整理されていない、政治的な姿勢が鬱陶しいといった欠陥を補って余りある力作だった。

 実際、民主党支持者はこの手の攻撃を「右翼の陰謀」という曖昧な言葉でまとめてしまうことが多いと思われるが、ルインスキー事件はもちろんのこと、中国へのミサイル技術の流出や、国連のイラク査察団に対する圧力などがメディアに取り上げられたときのホワイトハウス筋からの圧力も決して上等なものではなかった。

 大まかなテーマは、ウォール街や産業界との結びつきが強いクリントンが、「敵国」に対する姿勢が十分に強硬でなく、アメリカのセキュリティを危うくしているということである。これはある意味ではクリントンが「大人の分別」を持っているとも言えると思うのだが、著者が特に批判しているのは、そのような分別を働かせるにあたって、クリントン政権が隠蔽工作をしているという点だ。クリントン側にとって不利なのは、国防関連予算の削減に伴い、その手の組織にアンチ・クリントン派が多数生じたということにあるのだろう。実際、本書にはその手の人々によるリークと思しき情報がたくさん入っており、その種の情報が「隠蔽工作」の暴露という形を取るのは当然のことである。最終的な審判は歴史が下すことになるが、現在の経済的な繁栄が停止したら即座に磔になるんじゃないだろうかと思えてしかたがない。

 なお、ウィリアム・J・ベネットの『義憤の終焉』は、右派からの「道義」的な批判である。

1999/12/6

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