盗聴 ここまでやっている!!

知らず知らずに聴かれているあなたの秘密

堀田耕作 / 講談社 / 99/11/20

★★★★

まえがきとあとがきのみに意味があるという奇妙な本

 1997年に『ナゴヤ盗聴探査大作戦』というタイトルで出された本を大幅に加筆修正し、再編集したという文庫本。著者は探偵としての仕事の後、盗聴探査専門会社「ペガサス」を設立した人物。あとがきには、1998年に、「右翼幹部らと共謀して岐阜県御嵩町町長宅の電話回線へ盗聴器を取り付けた」という容疑で逮捕され、罰金二〇万円の有罪判決を受けたという記述がある。本人はそういう仕事をする興信所を紹介しただけだと弁明している。

 何か面白いことが書いてあるかと思ったけれども、「探偵のおもしろ内幕話」という感じで、『哲学教授を辞めて探偵になった男』は良い本だったんだなぁと思わせる内容だった。しかし、あとがきから引用(311ページ)。

私が許せないのは、警察の捜査官です。
警察の捜査官は、すべて押収するべき私の名刺リストの中から刑事の名刺を隠してしまったのです。
皆さんは、なぜ彼らが自分の仲間たちの名刺を隠したか分かりますか?
私のもとにあった刑事の名刺すべてが、かつて彼らからの盗聴依頼を受けた際にもらったモノばかりだったからです。

 まえがきによると、著者は「探偵」をやっていた時期に、多数の警察関係者から盗聴器の取り付けを頻繁に依頼されていた。このときに、捜査現場の暴走ぶりにショックを受けて、「警察官に対する協力を限定した」という。さらに、盗聴器発見業者にとってのお得意さまである政治家たちに、発見した盗聴器を「しかけた相手へつけてくれないか」と真顔で頼まれるというような経験もしている。こうした事情を踏まえて、著者はさきほど成立した「通信傍受法」に反対している。

 このように本書は、本文は軽い読み物でどうってことないのだが、まえがきとあとがきに警察への意趣返しが仕込まれているというなかなかトリッキーな仕組みなのだ。これと似た感触は『裏切り』にもあった。あの本には、内部告発を行った野村證券の元社員が、自らの今後の生き残りをかけて、暴露すべきことと秘匿すべきことを慎重に分けて書いているという感じがあった。『裏切り』の方が仕掛けとしては高度だが、どちらもチャーリー・マフィンを思い出させるような、「追い詰められた人間の反撃」としてのメタ・ノンフィクションといえるだろうか。ただし念のために書いておくが、本書は決して面白い本ではない。

 なお、チャーリー・マフィンの邪魔をするバカなスパイのようなのが、『警察官の犯罪捜査マニュアル』である。この本では、元警察官の著者が若手警察官への助言として、身分を偽って他人の住民票を取る方法を誇らしげに伝授している。

1999/12/9

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