そして謎は残った

伝説の登山家マロリー発見記

Ghosts of Everest

ヨッヘン・ヘムレブ/ラリー・A・ジョンソン / 文藝春秋 / 99/12/10

★★★★

仕方がないとはいえ、謎が残るという点で欲求不満になる本

 1999年には、1924年にエヴェレストの頂上に向かい、そのまま行方不明になったジョージ・リー・マロリーの遺体が見つかるという驚くべき出来事があった。本書はその捜索隊の活動とマロリーの隊の活動を交互に描いて、当時と現在のエヴェレスト登山を対照し、さらにエヴェレスト登山史における最重要の、マロリーが1924年に登頂を成功させていたかどうかという問題を解くための手がかりを示しているノンフィクションである。著者のヨッヘン・ヘムレブ、ラリー・A・ジョンソン、エリック・R・サイモンは捜索隊のメンバーで、彼らが語った話を作家のウィリアム・ノースダーフが本にしたという形になっている。

 先人に対する敬意に満ちた、ちゃんとした調査に基づくしっかりした本。『なぜアガサ・クリスティーは失踪したのか?』とは対照的である。偶然にも、ほとんど同じ時期の英国人に関する話だった。

 当の問題の答えは得られなかったが、捜索隊の持ち帰った資料や調査結果からいろいろな新事実が判明した。マロリーとそのパートナーのアーヴィンは、登頂に成功したかどうかはわからないが、引き返して下山している途中で、「ファースト・ステップ」と呼ばれる難所を少し下った時点で滑落して事故死したらしい。

 改めて驚くのは、1920年代の登山家たちの軽装ぶりで、これには現代の先鋭的な登山家たちもかなわないだろう。しかし今後、先鋭的登山が行き着くところまで行ったら、(適当な時代の)先人たちと同じレベルの装備で山に登るというスタイルが現れるかもしれない(もうあるかもしれないが、よく知らない)。さらに、この頃の英国人たちの探究欲/冒険心の凄さ。そして今も昔も変わらない、遠征隊の編成という仕事の泥臭さ。

 なおエヴェレスト関連では、1996年の大量事故を扱った『空へ』『デス・ゾーン8848M』がある。この2冊は必ず組で読まなくてはならない。特にベスト・セラーとなった前者を読んでいて、後者を読んでいない人はたくさんいると思うが、後者を読むとミステリ小説のどんでん返しのような感動を味わえる。『空へ』が映画化されているようだが、ブクレーエフがどう扱われているか心配だ。

1999/12/9

TRCの該当ページへ

amazon.comの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ