ソウルと平壌

萩原遼 / 文藝春秋 / 98/10/10

★★★★

南北コリアの歴史的パースペクティブ

 『北朝鮮に消えた友と私の物語』の萩原遼の朝鮮半島三部作の1作目。1989年の出版時には、南北朝鮮に1年以上常駐した世界で唯一のジャーナリストとして話題を呼んだ。赤旗記者だった著者にとっては、韓国の方が入国が難しい国だった。1998年の文庫化にあたって、「南北その後の十年」という章が追加されている。

 この本を読んで改めて驚くのは、ここ10年の韓国の変貌ぶりである。高度経済成長からIMFショックへ、そして金大中大統領の下でのさまざまな自由化政策など。『北朝鮮と永久分断せよ』で著者の韓国人軍事アナリスト、池萬元は、このような韓国の社会的変動は北からは不安定要素に見えるから、南北統一を阻害する要因になると指摘し、両国を完全に「分断」することを勧めている。たしかに「南北その後の十年」の部分を取り出して読むと、ドイツ統一のケースとは違って、韓国はいわゆる「吸収統一」をするにはあまりに脆弱だという感じがしなくもないが、変化が急激であるだけに、この感触はほんの数年でいくらでも変わるかもしれないという気もする。10年前の統一論といまの統一論はまったく違った性格のものになっているはずだし。

 まあそういうわけで、文庫化されたこの本は、20年ぐらいの長期にわたる朝鮮半島の事態の推移をコンパクトに概観することができる面白い本となっているのだった。

1999/12/18

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