人類の子供たち

The Children of Men

P・D・ジェイムズ / 早川書房 / 99/07/15

★★★

なにか先祖返りしたSFのような

 P・D・ジェイムズの近未来SF小説。なぜか子供が生まれなくなっている社会で、反体制活動に巻き込まれた大学教授がいろいろと翻弄される様子を描く。

 枠組みと印象が1960年代以前のSF小説という感じで、懐かしくはあるのだが、いまさらという気もする。それで改めて気づくのだが、60年代とそれ以前にあれほど主流だったビッグ・ブラザー式の専制主義的近未来観は、いまや完全に時代遅れになった。いまの時代の人間が近未来に不安を抱くとすれば、それは(全面核戦争の後の廃墟を想定しなくても十分に想像できる)混乱である。この変化の度合はすごいものだ。

 なお本書では、不明の原因で人類に新たに子供が生まれなくなったため、文明が全体的に停滞/後退しているというシナリオによって、近未来のテクノロジーの描写を避けるという仕掛けを使っている。逆にいえば、そういう非現実的なシナリオを使わないと、停滞を描くのは難しい。

1999/12/18

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