経済政策とマクロ経済学

改革への新しい提言

岩本康志、大竹文雄、齊藤誠、ニ神孝一 / 日本経済新聞社 / 99/10/15

★★★★

興味深いものの、難しい

 若手の経済学者4人による「新しいマクロ経済学」の立場からの政策提言の書。

 マクロ経済学はここ20年ほどで劇的に変わったのに、日本では依然として新古典派経済学とケインズ経済学の二極対立という古い文脈で語られることが多いことを批判し、「新しいマクロ経済学」の立場を解説し、それに基づく経済政策を提案するというきわめて意欲的な本。なのだが、この「新しいマクロ経済学」の解説の部分が十分に練られていないので、正直いってよくわからなかった。別の本を読めということなのかもしれないが。

 以下、素人の言い訳。新古典派経済学もケインズ経済学も、それらが語られているときには、基本的にこれらの概念が「絵空事」であるという態度で人は耳を傾けているわけである。静的なモデルとして論理的に作られているけれども、実際の場でテストすると、モデルに含まれていないパラメータが多すぎてうまく再現されない。生物学の進化論の自然選択の原理のようなものだ。一方、本書で言っている「新しいマクロ経済学」は、ラフにまとめると、動的なモデルを作ることによって、現実の世界をより忠実に記述し、また予測できるようにするという試みである。それを売りにする以上、個々の動的なモデルがどれだけ現実の世界の振る舞いを記述できているかという実証的テストが重要となってくる。

 つまり実験科学の領域に入ってきている。これは生物学の、ゲーム理論を取り入れた進化論みたいなレベルの話である。そしてマクロ経済学の一般向けの本では、この実証の部分が非常に貧弱なことが多く、この本もその例外ではない。だから、こういうパラメータを入れるとこういうモデルが作れますと言われても、「本当」にそうなのかという疑問がつねに生じてくるのだ。理論がより実用的になると、より厳しいテストにさらされる(それが「本当」なのかという根源的な疑問をつきつけられてしまう)ということである。

 もう1つ。マクロ経済学の一般向けの本を読むと、新古典派経済学やケインズ経済学できれいに説明できない個別の現象を説明するために、恣意的にパラメータを導入しているという印象を受けることが多かった。この本では、新しいパラメータを導入することの必然性を説明しているので、いままでの疑問のいくつかが解けた。しかし記述があまり体系的でないので、何か教科書を別に読んだ方がよさそうだ。

1999/12/18

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