古文書返却の旅

戦後史学史の一齣

網野善彦 / 中央公論社 / 99/10/25

★★★

マイナーなトピックの本ながら興味深い

 1950年頃に東海区水産研究所の月島分室で行っていた古文書の収集活動が、同研究所の活動の停止とともに中断したため、未返却の文書が大量に生じることとなった。この本は、この研究所に勤めていた著者が、その後の長い時間をかけて日本各地に文書を返却した経緯を描いた本である。

 ということできわめてマイナーなトピックの本ではあるんだが、以下のような特色がある。(1) 戦後の史学史の1つの流れを概観することができる、(2) 日本各地の地方史の点描という感じになっている、(3) 著者の研究がどのようなきっかけで生まれてきたのかを知ることができる。網野善彦の、特に地方史に関する本を読んだことがある人は、それらの成果がどのような活動を通して出てきたのかという点に興味を抱けるだろう。能登の時国家のフィールドワークについても1章が割かれているし、漁民の文脈で語られる対馬や霞ヶ浦についても言及がある。

1999/12/18

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