うまくやるための強化の原理

飼いネコから配偶者まで

Don't Shoot The Dog!: The New Art of Teaching and Training

カレン・プライア / 二瓶社 / 98/06/30

★★★

行動分析学をベースにした動物の訓練の啓蒙書

 著者はハワイのシーライフパークの創立者の1人である動物トレーナー。本書は行動分析学をベースにした動物のトレーニングに関する啓蒙書。positive reinforcer(正の強化子)に「好子」、negative reinforcer(負の強化子)に「嫌子」という訳語があてられている。

 本書の特徴は、人間を対象とした条件付けを積極的に肯定しているという点にある。以下、1981年にアリゾナ州の小さな町で、優秀な教師にボーナスを支給するという試みが行われたエピソードについて(187ページ)。

この話で私が重要だと感じることは、優秀な教師を強化する方法ではなく(それ自体よいアイディアであるが)、このイベントがニュースとして流され、全国的なニュースになったという事実である。好子を使った強化に変えることは、八〇年代でもアメリカの社会では新しいアイディアだったのである。しかし、強化は急速に受け入れられるようになり、もはや、実験的とか常軌を逸しているなどと言われなくなった。翌年には、他の町でも同じことを始めた、というニュースが流れるのではなかろうか。

 本書は1984年に書かれた本(訳書は1998年)。1990年代のいまでは事態はいっそう進んでいるのではないだろうか。明白にそう主張されているわけではないと思うが、コンピュータ・ソフトウェアのユーザー・インターフェイスのデザインなどでも、「ユーザーに対する報酬」みたいな概念がふつうに登場する。さまざまな製品のユーザー・インターフェイスには、ユーザビリティが高い方がよい製品であるという建前と同時に、そのインターフェイスそのものに対する慣れというか中毒を通して、製品の売上を高めるという発想が盛り込まれていることを見逃してはならないと思う。

 なお、ソニーの犬のロボットであるAIBOは、行動分析学の知見を取り入れて設計されているが、知的障害者などの社会訓練にそうとう役立ちそうだ。

 いずれにせよ、「人間に対する意図的な強化」はやっぱり相当に危ない概念であり、本書のあまりに楽観的な態度には違和感を覚えた。自己防衛のために知識武装しておくということは必要だと思うが。

 なお、『優生学の復活?』も参照。

1999/12/24

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