強国論

富と覇権の世界史

Wealth and Poverty of Nations: Why Some Are So Rich and Some So Poor

D・S・ランデス / 三笠書房 / 00/01/15

★★

ある意味で勇気ある本

 訳者は竹中平蔵、帯に堺屋太一の推薦文が載っている。著者の紹介文には「20世紀最大の歴史家の一人として声価が高い」という売り文句がある。

 古今東西の例をひいて、豊かな国と貧しい国の違いがどのように生じたかを解説するという本。特に産業革命以降の時代についての記述が詳しい。日本はヨーロッパ諸国以外で経済発展を遂げた唯一の国であると持ち上げられており、だいたいにおいて日本独自の労働倫理がそれに寄与したと言いたいようだ。竹中平蔵や堺屋太一が気に入ったのはこの点だろう。ところで、日本の農民の困窮具合を描いている324ページには次のような記述がある。

……魚(頭、皮、骨、尾も全部)というよりは、海の屑のような海草やプランクトンなどであった。今日でさえ日本人は、食べ物がなかったり、あり合わせのもので間に合わせていた時代の名残りを残している。

 つまり、たとえば「わかめそば」は、海の屑の海草と雑穀を組み合わせた食べ物である。なめこの酢のものとか魚のカマ焼きとか鯛の皮とかは、全部、貧しい頃の食生活の名残りである。持ち上げられている日本がこういう扱いをされていることからわかるように、他の(非西洋の)国々の扱いはもっと悲惨なものだ。ところどころに文化相対的な歴史学とか社会学に対する敵意がむきだしになっているが、要するにこの本は、西洋、特にいま勝ちを収めているアメリカ(著者の出身国)の豊かさを正当化することを目的とするはなはだ反動的な歴史経済学なのである。著者は南米やアフリカの諸国に猛烈な敵意を向けており、いわゆる「南北問題」という概念を生み出すマルクス主義的(というわけでもないと思うんだが)歴史観を強く非難している。ある意味で非常に勇気ある本だといえるけれども、それにしてもちょっと。

 こういう白人優越主義というか自民族中心主義の本は久しぶりに読んだ。竹中平蔵と堺屋太一はほんとに駄目だということがよくわかった。政治家には向いているのかもしれないが。

2000/1/14

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