グリコ・森永事件

最重要参考人M

宮崎学、大谷昭宏 / 幻冬舎 / 00/02/10

★★★★

内容は面白いのだが、構成が粗い

 グリコ・森永事件の「重要参考人」とされた宮崎学と、事件発生当時、読売新聞の事件記者をやっていた大谷昭宏が、時効が迫っているこの事件を回顧し、思うことを語るという本。面白い企画であることは間違いないが、どうも二人が好き勝手に喋った内容をテープ起こしした部分が多いようで、構成が散漫だ。1冊の本にするよりも雑誌の特集記事ぐらいにまとめるのが適切な内容だと思った。

 記憶が薄れかかっているこの事件の問題点が手際よくまとめられているので、リファレンスとして便利。

 大谷が宮崎の疑惑を「追究」するベースとして使っている、一橋文哉の『闇に消えた怪人』は、宮崎学という人物を奇妙な形で世に出した問題作だった。宮崎学本人がグリコ・森永事件への関与を否定しているので、結果としてあの本は陰謀論の迷路に迷いこんでいたということになるのだが、面白い本だったことは間違いない。本書はあの本で提示されていた宮崎学に関する疑惑に一通りの答えを出し、宮崎と大林がそれぞれ仮説を述べるという構成になっている。もちろん両人とも確固とした考えを持っているわけではなく、また上にも書いたように構成が悪いので、あまり明解な答えは得られない。

 この本は、グリコ・森永事件そのものに関する考察よりも、それに付随する諸問題について、宮崎と大林が述べる見解の方が面白い。どちらも目新しいというわけではないが、問題への切り込み方が両人のバックグラウンドの違いを反映して微妙にずれているところが興味深いのである。しかし、そこで取り上げられる問題はいずれも「古く」、バブルとその崩壊を経験した日本にとって、事件が発生した1984年はすでに大昔なんだということを痛感した。警察の不祥事や総会屋といった問題はいずれもまだ残っているが、それらは残存物であるという感じが強く、あまり遠くない時期になくなる(あるいは別の姿に変身する)だろうという気がする。いやまあなくならないかもしれないが、その場合でも過去の遺物というふうに感じられつづけるだろう。松本清張のノンフィクションの世界のように。

2000/1/30

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