それでも新資本主義についていくか

アメリカ型経営と個人の衝突

Corrosion of Character, The: The Personal Consequences of Work in the New Capitalism

リチャード・セネット / ダイヤモンド社 / 99/12/02

★★★★★

つまらなさそうな題材だが、これがびっくり面白い

 アメリカ型経済社会とかニュー・エコノミーなどという言葉で表現される現代アメリカの企業社会のあり方は、個人の尊厳と衝突するものであるということを論じる本。著者紹介によると、著者は「社会思想家」で、『無秩序の活用―都市コミュニティの理論』、『権威への反逆』、『嘘とは何だろう―或る寓話小説』、『公共性の喪失』などの著作がある。非常につまらなさそうな題材なのだが、驚いたことにこの本は面白かった。最近読んだ本のなかでは『マクドナルド化する社会』と似ているが、こちらの方は企業内の労働者が現代アメリカの急激な変化によってどのように変容させられているかということに焦点を当てている。

 1980年代以降のアメリカ映画やエンタテインメント小説を読んでいる人ならば十分にわかっているはずのことばかりではある。要するに、労働力の流動化とかリスク・テイキングとか企業のリストラクチャリング/リエンジニアリングといったお題目の裏で、労働者は大変な思いをするということだ。この本では、実際にそのように苦労している何人かの人のパーソナル・ヒストリーを紹介しながら議論を進めている。

 『Different Games Different Rules』の項で、コミュニケーションの仕方においてアメリカ人が"independent"であるという観念は、実のところそう成り切れていない人が大勢いるということを示唆していると述べた。本書では、そのような人々がどのような困難に直面しているかということを紹介し、新しい労働市場での勝者が従来の意味での「労働者としての幸福」を感じられる人間とは限らないと論じている。しかも厄介なのは、個々人が労働市場の価値観を内面化してしまうことなのだ。さきほど述べた個人の"independent"とか"flexible"とか"risk-taking"などの「望ましい」とされる属性は、まさにそのような内面化された価値である。

2000/2/11

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