地球温暖化の真実

先端の気候科学でどこまで解明されているか

住明正 / ウェッジ / 99/11/01

★★★★★

気候科学の現状をフランクに語っている本

 著者は東京大学気候システム研究センター所長。現在の気候科学で、地球温暖化という問題がどこまで解明されているかをフランクに語っている本。巻末に石弘之と松井孝典を交えた座談会があって、これも非常に面白い。松井孝典編の『地球学』は非常に散漫な印象を受けたが、本書ていどに問題意識が共通している人々の間での座談会は楽しくなりうる。

 地球温暖化については、『地球温暖化の政治学』(問題の意味をあまりわかっていない新聞記者の本)と、『地球温暖化で何が起こるか』(はっきりと政治的な姿勢を打ち出している学者による本)があったが、それらと比べると本書では、この問題がまだよくわかっていないということを正直に述べた上で、ではどういう態度を取るべきなのかという、非科学者的な、一般人のレベルでの倫理の確立という方向へ議論を進めている点に好感が持てる。

 とりあえず、CO2と地球温暖化を巡る問題についての現状を簡単にまとめておく。現在の段階では次のことがわかっていない。(1) 地球が長期的なトレンドとして温暖化の方向に向かっているのかどうか、(2) 人類によるCO2の排出がそれにどの程度寄与しているのか、(3) 温暖化しているとして、果たしてそれが地球(あるいは人類)にとって良いことなのか悪いことなのか。

 理性的な人間がとりうる態度は、「これらのことがわかっていないいまは、とりあえずCO2の排出量をコントロールした方がよい」というものしかないと思う。しかし全地球的なCO2の排出量のコントロールを行うと、いまの国際政治の環境では、南北格差がいっそう増大する。仮に経済先進国が一方的に譲って、排出量を大幅に削減すると、グローバルな経済危機が起こる。結局は、いかに経済危機を起こさずに、全世界的に経済規模を縮小していくかということになると思うのだが、そんな発想はいまのアメリカ、ヨーロッパ、日本の政策決定者たちの頭の隅にもないだろう。

2000/2/18

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