美容外科の真実

メスで心は癒せるか?

塩谷信幸 / 講談社 / 00/02/20

★★★★

美容外科の権威によるエッセイ風の紹介

 著者は北里大学形成外科教授などの職を経ている形成外科・美容外科の権威。美容外科の発展の歴史、実際の手術の内容などを軽い感じで紹介している本である。

 この分野での「本流」に属している人なので、流行に乗って現れる「信頼の置けない」業者の危険性を警告している。まあきわめてまっとうな本だと思われる。

 『ブレストマン』は、アメリカの豊胸手術医の隆盛と没落を描いたTVムービーだった。本書ではこの件について簡単に触れ、次のように記している(98ページ)。

いまとなっては、本当にシリコンが原因かどうか、さらにはこの病気の存在さえ疑われているという、まことに不可解な事件である。
そもそもヒトアジュバント病について、異論が多い。これは免疫学の問題なのでここでは深入りしないが、まず命名が不適当である。また、日本で問題となったのはシリコンバッグではなく、不純物の多いシリコンジェルの注射である。このころの日本では、ワセリンや混ぜものをした工業用シリコンを、ところかまわず注射するインチキ"美容整形"が横行していたのだ。
しかしこれによる障害は、単なる異物反応かアレルギー性疾患で、ヒトアジュバント病などという"奇病"扱いする必要はなかった。
にもかかわらず当時のアメリカ連邦食品衛生局長が、いわば点数稼ぎにこれを大々的に取り上げたため、全米挙げての大騒動になった。ダウコーニング社は敗訴し、莫大な負債をかかえて倒産する。
その後、訴えた患者さんはとんでもない食わせ者で、じつは豊胸手術を受ける前から膠原病であったことが明らかになるが、すべては後の祭りだった。
この事件のあおりで、一時期シリコンバッグの使用は禁止され、日本でもその製造と輸入が禁じられた。その後シリコンバッグは改良され、欧米では再び使われるようになったが、日本ではいまだに医師自身で並行輸入しなければならない状況が続いている。

2000/2/26

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