リストラと能力主義

森永卓郎 / 講談社 / 00/02/20

★★★

空想小説のような内容

 著者は『バブルとデフレ』『〈非婚〉のすすめ』の人。本書は、いまの日本で行われている「リストラ」(要するに人員削減)は長期的な人材確保という観点で見ると企業のためにならないものであると述べ、いま言われている「能力主義」はその能力の評価がうまく行われないために、結局はうまく機能しないと主張し、それに代わる仕組みを提案している。

 それに代わる仕組みは、人事制度に市場経済の原則を持ち込んだようなもので、いまの、あるいは近い将来の日本にこれを導入するというのは空想小説のようにしか思えない。はっきり言って、多くの人は、自らの労働能力を市場経済にさらしたくないから、企業に就職するのだ。著者が提案している仕組みは、すべての従業員が社内ベンチャーに従事するというような感じのもので、これは(特にすでに大きくなっている)企業にとっては効率的なメカニズムかもしれないのだが、大部分の従業員にとっては災難以外のなにものでもないような気がする。

 著者は、自分が提案している仕組みはいわゆるアメリカ流の「リストラ」とは違うのだと考えているようだが、行き着く先は『それでも新資本主義についていくか』で取り上げられているのと同じような事態である。

2000/3/11

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