カーラのゲーム

Kara's Game

ゴードン・スティーヴンス / 東京創元社 / 00/01/28

★★★★

なかなか骨太な冒険小説

 著者はイギリ人の冒険小説家。邦訳されたものには『テロルの嵐』(読んだような気がするがわからない)というものがあるが、本国ではすでに8冊の本を書いていて、本書は1996年に書かれた7冊目である。

 ユーゴスラヴィア紛争で苦しむムスリムの女性がテロリストになり、飛行機をハイジャックする。これに、ユーゴスラヴィアで関りを持ったSASの隊員が絡んでくる。巻末の解説には「重層的」などという表現が使われているけれども、要するに描写がくどく、いってみれば「洗練されていない」文体で、ユーゴスラヴィア紛争を捉える視点もあまり気に入らないのだが(『ユーゴスラヴィア多民族戦争の情報像』の項を参照)、主人公の女性がテロリストになるまでの前半部分の描写が非常に良かった。ここの部分では「重層的」な文体が大きな効果をあげていて、ぎりぎりまで追い詰められる主人公の悲惨な境遇がストレートに伝わってくる。

 しかし、それと同じ文体で、イギリスの情報機関員たちの情事とか、外務大臣のせこい駆け引きとかが描かれてしまうと、急に前半部分までも安っぽく思えてしまうのである。まことに難しいものだ。映画のシナリオならば、後半部分は思い切ってカットして、すぐにハイジャックの場面に行ってしまえ、という風になると思うのだが、それの方がかえって良かっただろう。

 いずれにせよ、他の小説も読みたいと思った。

2000/3/11

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