「住宅」という考え方

20世紀的住宅の系譜

松村秀一 / 東京大学出版社 / 99/08/25

★★★

学者がサブカルチャーを論じる、というパターン

 著者は建築学専攻の学者。20世紀型の工業的な住宅を論じている本だが、あまり系統だってはおらず、雑学本という感じになっていた。著者自身が、「現代思想」の立場から扱われる「建築」という観念から離れようとしながらも、そこから自由になっておらず、本来ならばそのような事情が文章にスリルを与えてもよさそうな気がするんだが、まあそうはなっていなかった。

 おそらく、建築学の周縁としての「現代思想的建築」プロパーの中では、工業住宅は周縁なのだろう。え〜、要するに、文学者が映画とかSF小説とかを論じると一般につまらなくなるというのとパラレルな本だったということで。オタク向けのデータが豊富なのも同じ。

 プレハブ住宅を扱った『「家をつくる」ということ』の良さを改めて思い出した。あの本の著者はおそらく上記の「建築」の観念にはまったく興味がなく、消費財としての住宅を潜在的な消費者の立場から考えようとしていた。ただしあの本では「現代思想」の代わりに「文学」みたいな軸が据えられていて、それが鼻についたのだが。

2000/3/11

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