病院沈没

外資参入で医療ビッグバンが始まった!

丹羽幸一、杉浦啓太 / 宝島社 / 99/12/18

★★★★

医療ビッグバンに関する解説

 著者らは医療ジャーナリスト。タイトルは『病院沈没』だが、病院に限らず医療ビッグバンのさまざまなトピックを取り上げて論じている。ちょっと構成に難があるが、まあ言いたいことはわかる。

 『アメリカ司法戦略』は司法の分野におけるアメリカン・スタンダードを論じた本だったが、この『病院沈没』は医療の分野におけるグローバル・スタンダードを論じている本である。どちらも日本の既存の枠組みが根本から変わる可能性を秘めた分野だが、その変化の速度と実体上のインパクトは司法よりも医療の方が大きいと推測される。医療の方が(製薬業も含めて)本質的にグローバルな営みであり、この点での「スタンダード」は大陸ヨーロッパの国々にもすでに波及していること。医療の方が経済的営みとしての性質が強く、司法サービスよりも競争にさらされやすいこと。そして何よりも、現在の仕組みの破綻がはっきりと見えており、広く認知されていること、などの理由による。

 アメリカにおいて、病院における医療と経営の分離が加速化したのは1980年代だった。その影響を受け、司法の分野での「リーガル・スリラー」とほぼ同時に、いわゆる「メディカル・スリラー」と言われるミステリ小説のジャンルが花開いた。このジャンルの小説の典型的なプロットの1つは、医療よりも経営にコミットしている経営者が密かに進行させている陰謀に、高い理想を抱いた若い医者が気づき、巻き込まれていくというものである。この背後には、医療と経営の分離、それに伴うプロフェッショナルとしての医者の流動性の向上、医療水準の二極化(言ってみれば「貧富の差の拡大」)、それに伴う医者が「聖職」意識を持ち続けることの困難さなどの事情があった。

 日本の医療サービス関連の既存勢力の抵抗力がどれほど大きなものなのかはわからないが、長期的に見れば、今後の日本の医療サービスが市場経済に強くさらされていくのは避けられないだろう。アメリカの娯楽小説は、まことに、日本の未来像を写し出しているのである。

2000/3/18

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