被差別部落の青春

角岡伸彦 / 講談社 / 99/10/12

★★★

古い形式の被差別部落ルポを引きずっている

 被差別部落に関するルポルタージュ。帯には「タブーを超え、しなやかな感性で「差別・被差別の現在」を直視するまったく新しいルポルタージュ、誕生!」というコピーがあるが、内容はかなり古い観念を引きずっている。扱っている事象はそこそこ新しいため、古い観念では対応できていないのだが、そのことに著者自身は気づいていないというパターン。

 この本の記述を文字通りに受け止めると、著者は被差別部落出身だが、実際に差別を受けた体験/記憶はなく、むしろ比較的に裕福な家に育った。このため、成長して、被差別部落が差別されている事例を必死になって探しているのだが、古典的な事例になかなか出会えないで困っている、という感じである。「なんだこりゃ」と言われても仕方がないだろう。

 やはりもうちょっと勉強して広い視野で物事を見た方がいい。この本で取り上げている結婚差別の問題についても、部落差別という分野から足を一歩踏み出して、現代日本の結婚あるいは男女関係全体を視野に入れて考えると、またずいぶんと違った結論や意見が出てくると思う。実際のところ、著者がインタビューを行っている人の少なからずの人数が、すでに結婚問題を部落差別という文脈ではなく、もっと一般的な「結婚問題」として受け止めており、著者がむりやり部落差別という文脈を持ち込んだために困惑しているということが明らかなのだ。というか、バカにされているのかもしれない。ちょっとニュアンスは違うが、ルーズソックスをはいている女子高生にフェミニストがインタビューしている、というような図と似ている。何かしら意味のある結論は出せるかもしれないが、それは本人たちの心象風景からはかなりずれたものになる。

 なお、関連書籍として『「部落史」の終わり』『脱常識の部落問題』『だれも書かなかった「部落」』『ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ』『ドキュメント 屠場』など。

2000/4/8

 本書の著者が『脱常識の部落問題』に寄稿していることに気づいた。『だれも書かなかった「部落」』の中で批判されたことに関するグチが書かれている。『だれも書かなかった「部落」』でどういう批判があったのかすでに覚えていないが、まあ想像はできる。

2000/5/2

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