破れかぶれでステージ

Way Past Dead

スティーヴン・ウォマック / 早川書房 / 00/03/31

くどすぎて読めないぞ

 『殴られてもブルース』、『火事場でブギ』のハリー・デントン・シリーズの3作目。『裁判はわからない』などのパーネル・ホールのシリーズに似た感じの「ユーモア・ミステリ」なんだが、これがまたユーモアがくどくて辟易し、申し訳ないが半分ぐらい読んだところで投げ出した。

 小説そのものがくどいだけでなく、翻訳がくどい。よく使われる(嘆かわしい)手法だが、今回はあまりにひどいので、目についたところだけをピックアップして紹介してみよう。

 瞬間、一九七〇年代にバート・レイノルズが主演したカー・アクション映画、《トランザム7000》の世界にほうりこまれてしまったような気がした。(13ページ)

 人畜無害の男たちで、有名なロックバンド〈グレイトフル・デッド〉のギタリスト、ジェリー・ガルシアそっくりのやつが…(19ページ)

 アニメ映画の《ルーニー・チューンズ》なみに、いかれ野郎が幅をきかせるなんて。(27ページ)

 このぶんだと、月曜の夜には、全市民の半数がABCテレビの報道番組《ナイトライン》で、有名なニュースキャスターのテッド・コッペルの解説に耳をかたむけていることだろう。(39ページ)

 数分後、テレビ体操でおなじみのお笑いタレント、リチャード・シモンズが怒り心頭に発して卒中を起こしそうな…(47ページ)

 この前レイと会ったときには、有名なカントリー歌手のランディ・トラヴィスがつぎに出すシングル盤のトップで…(48ページ)

 この先また健康保険に入れるとしたら、間借り先の家の前にテレビタレントのエド・マクマーンが車をとめ、パブリシャーズ・クリアリング・ハウス社発行の一千万ドルの小切手をとどけにきたときくらいのものだろう(54ページ)

 チーズバーガーとジャガイモの炒めものをつくりながら、CBSテレビのニュース番組《シックスティ・ミニッツ》をながめだした。有名な報道記者のエド・ブラッドリーが、これまでカルト集団の犠牲者を何人もマインド・コントロールの恐怖から救った人物のエピソードを紹介するくだりで…(61ページ)

 警官は身をひるがえし、精いっぱい、映画《ダーティハリー》の刑事役のクリント・イースドウッド風に目を細めて私を観察してきた。(94ページ)

 あれならカリフォルニアに引っ越して、NBAのロサンジェルス・レイカーズに売りこんでもいいんじゃないのか(119ページ)

 あっと言うまに被疑者の権利を述べたミランダ準則の告知をうけ、つぎの瞬間にはもう身柄を拘束されちまったらしい(138ページ)

 コメディ番組の《チアーズ》だったら、もう何回もコントを楽しんでるわ。あれに出てくる公認会計士のノーム・ピーターソンって、なかなかいい男じゃない。(147ページ)

 レイは、カントリーの人気歌手チャーリー・ダニエルズ顔負けに、いろんな比喩をいっしょくたにつかう名人だった。(200ページ)

 「私立探偵(プライヴェート・ディック)をお願い」/思わず息を吐きだして、ティーンエージャーさながらにくすくす笑いだした。"プライヴェート・ディック"には、息子という意味もあるからだ。(208ページ)

 「作り」じゃないよ、本当にこう書いてあるのだ。こういう調子だから、原著にあったぎりぎりの「軽み」も台無しにされているのだろう。もちろん原著と対照したわけではないので、本当に「一九七〇年代にバート・レイノルズが主演したカー・アクション映画、《トランザム7000》の世界」って書かかれている可能性はあるけれども(ないって)。

 「一九五〇年代に三船敏郎が主演したチャンバラ映画、《七人の侍》の世界にほうりこまれてしまったような気がした」とか、「朝日放送の有名なニュース番組《ニュース・ステーション》で、有名なキャスターの久米宏が」とか、「あれなら東京に引っ越して、プロ野球の読売巨人軍に売りこんでもいいんじゃないのか」とか。

2000/4/23

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