Snow Crash

Neal Stephenson / Bantam / 92/06/01

★★★

おもちゃ箱をひっくり返したような

 Neal Stephensonが1992年に書いたものをペーパーバックで読んだ。SFを読んだのは久しぶりで、ひょっとしたらダン・シモンズの『ハイペリオン』シリーズ以来かもしれない。裏表紙の誉め言葉には、"A cross between Neuromancer and Thomas Pynchon's Vineland"とあるが、これは要するに「ダン・シモンズのような構想力と筆力がない」と言っているわけで、いやその通りだった。

 おそらく、この小説の一番重要な点は文体なのだろう。いろいろなガジェットはたしかに面白いのだけど、クリエイティビティがあるというよりはむしろ、描写のしかたに魅力があるというべきだ。それは、未来のテクノロジーをどのように描写するかということではなく、未来のテクノロジーを使っている人間とそれを取り巻く環境を、どういうトーンで描くかということで、奇怪な固有名詞をたくさん散りばめたこの文体は、来るべきネットワーク社会の姿を正しく掬い取っているという感じがする。

 個人的には、ここに描かれているMetaverseのようなバーチャル・リアリティ環境は相当先でないと実現しないだろうと思うので、なんとなく時代錯誤的な感じがした。近未来SFというのは難しい。

1998/5/12

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