反グローバリズム

市場改革の戦略的思考

金子勝 / 岩波書店 / 99/09/20

★★★

申し訳ないがよくわからない

 帯には次のように書いてある。「グローバリズム対ナショナリズムという不毛な対立図式を超えていく「第三の道」を構想する」。「グローバリズムとナショナリズムの対立図式」を説明しているところは妥当なのだが、その「第三の道」がどういうものなのかがわかりにくい。「セーフティーネットを下方のコミュニティに向かって張り替える」とか、「市場の中に公共空間を創り出す」というようなキャッチーなフレーズが、具体的にどのような政策にマッピングされるのかが非常にわかりにくいのだ。もちろん提唱される個々の政策には、有効そうなものが見られるのだが、それらが逆に上記のようなキャッチーなフレーズの下に統括される意味がわからない、と言うべきか。

 このような意味のわからなさは、まさに、グローバリズム対ナショナリズムという「不毛な対立図式」が強力であることの裏返しでもあると思う。この対立図式はわかりやすく、包括的に物事を説明できるがゆえに、広く流布している。だから著者の野望は本質的にチャレンジングなものなのだ。

 未来がどうなるかわからないが、結果として著者が提唱するような仕組みが広く社会に行き渡ったら、この人は回顧的にビジョナリーと認定されるかもしれない。「現状をひねた形で論評する評論家」を、その現状ができる前から先取りしているようなものだ。でも、こと経済政策のような世俗的な話では、フィージビリティのある個別の政策を地道に提言していくというのが一番まっとうな行き方であるようにも思える。

2000/5/14

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