死せる少女たちの家

The Church of Dead Girls

スティーヴン・ドビンズ / 早川書房 / 00/04/15

★★★★

ミステリ・プロパーではないが面白い

 1998年に単行本で出ていたものが文庫化された。著者は詩なども書いている人で、ミステリ・プロパーの作家ではなさそう。そのため、ミステリとしてのプロットは弱いのだが、それを補うだけの充実した描写がある。

 何よりも目を惹くのは、固有名詞が記される登場人物の数がやたらと多いこと。アメリカの田舎のコミュニティで、少女誘拐事件をきっかけに、さまざまな人間関係が壊れていく様子を丹念に描き込んでいる。その推移もあまり理にかなったものではなく、現実のようにランダムなように見える。私は『全面戦争』『サイバー戦争』のエリック・L・ハリーを思い出した。ハリーも、理にかなわない事態の推移を描くことで、小説に現実感を持たせるのが非常に上手である。

 また、この小説は主人公の一人称で書かれているのだが、この主人公は隠遁者で、他人の内面に踏み込むということをしたがらないキャラクターに設定されている。このため、登場人物たちの描写はほぼ外面的な部分に限定され、結果としてかなりハードボイルドな雰囲気が醸成されている。これはなかなか面白い効果ではある。実際、最後まで主要な登場人物たちが何を考えてさまざまな行動を取っているのかが説明されないため、かえって個々の行動に重みが生じている。単に小説的な技巧として放り出すのではなく、語り手の性格というところに帰着させているところが斬新。

2000/5/20

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