銀行革命・勝ち残るのは誰か

メガバンクVS.異業種銀行

小原由紀子 / 講談社 / 00/04/20

★★★★

バブル崩壊以降の銀行の状況

 バブル崩壊以降の銀行の状況をコンパクトに解説している好著。著者は金融アナリスト。「本書中の見解はすべて筆者個人の意見であり、現在属している、あるいはかつて所属した組織とは無関係である」と強調しているのだが、現在はイトーヨーカ堂銀行設立準備室所属とあるので、なかなか判断が難しい。まあこれだけ従来の銀行を批判しておいて「長銀を経て現在はさくら銀行勤務」とかあったらそりゃないぜとなると思うんで、これでいいのかも。

 不良債権と公的資金の注入、それに対する株式市場の反応などを織り交ぜた面白いストーリーを語ってくれる。また、アメリカ的なリテール重視の銀行の誕生の経緯を解説し、競争に勝つためには、日本の銀行もビジネス・モデルを変えていかなくてはならないと述べ、変化のスピードが遅い既存の銀行が、このところいくつも名乗りを上げている新規参入の銀行に脅かされるだろうと警告する。

 非常によく整理された構成。本書でもその気配が見えるのだが、おじさんばかりの業界の中でのアイドル的存在だったんじゃなかろうか。しかし、著者の提言はいってみればアメリカに追随せよの一本槍で、日本のメガバンクにそれ以外の路線がありうるかどうかという、なんというか現実的とでもいうか、そういう提言はない。本人がアナリストをやめてイトーヨーカ堂銀行という「実業」(というのも変だが)にコミットしたことは、メガバンクの未来に絶望し、新規銀行にそれなりの勝機を見いだしたということなんだろうし、本書の中でも遠まわしにではあるが、有能な人材が大銀行から流出するだろう(実際には、うまくインセンティブを作らないと流出するだろう)と述べている。いまの私は、どちらかといえばこれとは逆の立場からの主張に関心があるのだが、そういうものはあるのだろうか?

2000/6/9

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