声と日本人

米山文明 / 平凡社 / 98/02/23

★★★★

タイトルから受ける印象とは異なり、網羅的な入門書

 著者は「音声言語医学」を専門としている人で、音声言語障害を約45年にわたって臨床的に扱ってきたとのこと。肩書きには、「日本音声言語医学会の評議員」、「日本声楽発声学会の副理事長兼副会長」とある。タイトルから受ける印象とは異なり、人間の声についての網羅的な解説があって、これが非常に面白い。声が出る身体的なメカニズムの説明があり、裏声とは何か、ビブラートとは何かみたいな解説がある。また、日本では発声・発語教育がほとんど考えられてこなかったとして、この状況を変えなければならないと主張している。残念ながら、具体的にどういうことをすればいいのかが書いてなかったけど、著者はもう別の本で十分に書いているんだろう。

 最後の章、VIII「私の診た名歌手たち」が圧巻で、著者が診察したことのある歌手について、その声帯の形状とか人となりなどが詳しく記されている。これはプライバシーの侵害になるんではないだろうかと思えるような描写で、ちょっとまずいんじゃないと思ったけれども、面白い。ほとんどポルノグラフィー。

 いろいろなレベルの話題が雑然と並んでいることから、著者が仕事を通して幅広い経験をしている様子が窺える。ちなみに、日本語は母音が発音されることが多いので、(ヨーロッパ系の言語と比べて)声帯に負担がかかるとのこと。

1998/5/16

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