アメリカ帝国への報復

Blowback: The Costs and Consequences of American Empire

チャルマーズ・ジョンソン / 綜合社 / 00/06/30

★★★★

なかなか興味深いが

 本書の『アメリカ帝国への報復』の「報復」という言葉は"blowback"の訳語である。したがって、「報復」という日本語に含まれているような「復讐」とか「怨み」のイメージはあまりなく、むしろ「因果応報」とか「反作用」のように価値中立的な、ある種のメカニズムの記述というイメージである。本書の全体的な目的は、「アメリカ人に対し、アメリカ人が反アメリカ的な敵対行動として捉えがちな諸外国の振る舞いは、実はアメリカ自身が行っている帝国主義的な拡大政策に対する反作用なんだよということを啓蒙する」というもの。

 著者のチャルマーズ・ジョンソンはいっときアメリカの対日本観の「リビジョニスト」として知られた。日本国内では「ジャパン・バッシャー」と呼ばれたわけだが、私は公平に見てこれは日本人の側の「痛いところを突かれた!」という狼狽の表われだと思う。本書は、著者がアジアを専門としていることと、アメリカの「帝国主義」がもっぱらアジアを中心に展開されていることから、韓国、北朝鮮、中国、日本、そして東南アジア諸国におけるさまざまな「アメリカの国益を損なう」ような現象がどのような文脈で"blowback"とみなせるのかを解説している。他の国のことについてはともかく、少なくとも日本に関する記述については、ちょっと後ろめたいところもないわけではないにせよ、日本人が一度は言ってみたいと思っていることをちゃんと汲み取っているんじゃないだろうか。たとえば戦後日本の自民党支配について、別に反省しないわけではないけれども、アメリカ人に「だから日本には民主主義が育っていないのである」などと言われたら、「この体制を仕組んだのはアメリカだろう」と(少々の無理をしても)言いたくなるというようなニュアンスをちゃんと書いてくれているのである。日本のナショナリストが今後チャルマーズ・ジョンソンをどう評価するのか興味深いところだ。

 最後の方の日米の経済関係を論じた部分は、ポール・クルーグマンが『グローバル経済を動かす愚かな人々』などでさんざん嘲っている「国際経済学」から依然として脱却していない。これは『「アメリカ陰謀論」の嘘』で批判されている日本側の「マネー敗戦」論者の鏡像であり、両者が同じ現象にどれほど異なる解釈を与えているかを読むだけでけっこう楽しい。まあたぶんどちらの側にも幾許かの真実はあるんだろう。

 沖縄の基地問題について、日本国内の基地反対派の意見をちゃんと汲み取って紹介しているという点は、アメリカ人の著作家としては珍しい。

2000/6/30

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