代議士のつくられ方

小選挙区の選挙戦略

朴吉吉熙(バク・チョルヒー) / 文藝春秋 / 00/02/20

★★★★★

しっかりとしたフィールドワーク

 著者の朴吉吉熙(バク・チョルヒー。2つの吉は1つの文字)は『代議士の誕生』のジェラルド・カーティスの弟子で、本書はコロンビア大学での博士論文をベースにしているようだ。1996年の総選挙における東京十七区の自民党候補者の選挙活動を対象にしたフィールドワーク。特に、小選挙区制への移行に伴って、候補者の選挙活動にどのような変化が見られたか(または変化がなかったか)ということに焦点を当てている。

 ちなみにこの候補者は平沢勝栄。このとき新人候補者だった平沢は、後に『自自公を批判する』の白川勝彦らと一緒になって自自公連立批判を展開したが、2000年6月の衆議院選挙ではこのことが祟って、自民党の公認を受けた最後の候補者となり苦戦を強いられた(結果的に再選は果たした。なお、白川勝彦は公認を受けられず落選。選挙区内の公明党員/創価学会員が対立候補の民主党候補者に投票したとされる)。

 全体として、非常に面白い本。日本の選挙がアメリカのポリティカル・スリラーのようにスリリングに描かれており、読み物としても楽しめる。まあもちろん、2000年の衆議院選挙で表面化した自民党の都市部での弱さ、自自公連立(現在では自公保)の選挙の場面でのインプリケーション、政治改革の目玉であった小選挙区の与えた(あまり芳しくない)影響などの重要なトピックを、1つの選挙区を対象としたフィールドワークをもとに論じるその手腕は巧みで説得力がある。今回の選挙についても、これと似たような本を読みたいと思う。

 なお、本書を読んで、平沢勝栄らが主張していた「公明と連立すると、反公明の票が失われる」という議論の具体的な意味合いがよくわかった。創価学会に対して反感を抱いている宗教団体は数多く存在するが、特に新人候補者だった平沢勝栄は、そのような宗教団体を大きな票田の1つとして活用して前回の選挙に勝ったわけである。そのような宗教団体には創価学会のスパイ(これは私の言い方だが)がいないので、アプローチしやすいという事情があるらしい。

 著者は韓国人。この本を自ら日本語で書き下ろしたのだとしたらかなりの語学力である。今後注目。

2000/7/21

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