私は闘う

野中広務 / 文藝春秋 / 99/07/10

★★★★

何といったらよいか、政治家のしたたかさ

 野中広務が1996年の衆院総選挙の前に出版した本。村山内閣の下、自治大臣・国家公安委員長として、オウム事件や阪神・淡路大震災に対応した件や、村山内閣の成立から橋本政権への移行あたりの時期の裏話を書いている。ここ4、5年の世の中の変化に改めて驚く。自社連立とか新生党なんて、10年以上も前の話に思えてしまうんだが。

 本書は出版当時、現役の政治家が書くには生々しすぎる内容で話題を呼んだ。実際、野中広務が他人に向けている批判はかなり厳しいもので、(1) 小沢一郎を信頼の置けない政治家としてケチョンケチョンにけなし、(2) 政教分離に基づいて反公明の姿勢を強く押し出し、(3) 村山政権を河野・森体制に禅譲してもらおうと画策した森喜郎を強く批判している。後にこの3点すべてについて180度の転回をした(小沢一郎についてはもう一度転回したが)ことを考えると、政治家がこのような生々しい本を書くのはやっぱり問題なんだと思わざるをえない。これらの転回を、腹が据わっていないというか、柔軟であるというかは人それぞれだろうが、底知れぬ不気味さを備えた人物であることは誰もが同意するだろう。

 なお、2000年6月の衆院選挙で、民主党が十分な躍進をできなかった理由の1つは、民主党の鳩山と菅が、自民党の悪人面をした人々(野中はもちろんだが、森、青木、亀井など)に比べてTV映りが悪かったことにあるのではないかと私は思っている。それにしても自民党のこれらの人々の顔つきと挙措は、よくもまあこういうのを揃えたとしか言えないほど、サスペンス映画に出てくる悪人にぴったりだ。鳩山と菅はgood guysの側だが、仮にハッピー・エンディングの映画であっても途中で殺されそうで、あまり賭けてみる気にならない。民主党は早急に、もうちょっと生き残る確率が高そうな人を代表に立てるべきである。というように、政治家をTV映りで判断するのはやっぱりよくないと思うんだが、仕方がないと思う。

2000/7/21

TRCの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ