日本の古代道路を探す

律令国家のアウトバーン

中村太一 / 平凡社 / 00/05/23

★★★★

概論は面白いのだが、詳論はマニアックか

 倭王権と律令国家によって設計され造られた、幅が広い直線道路(古代道路)についての、歴史地理学とその他の分野での研究成果を紹介する啓蒙書。研究手法などを述べている概論の部分はきわめて興味深く、うまく書かれているのだが、具体的な話になるとちょっと置いていかれてしまった。まだ研究が十分に進展していないためなのか、細かい事実が並べられていても、その大きな像がはっきりと焦点を結んでいないという印象がある。

 著者は最後の方で、これからの古代道路研究の場は、ソフトな文献史学や歴史地理学から、ハードな考古学研究の方へと移っていくだろうと予想しているが(これは古代道路の存在が認知されてしまったため)、未発見の道路を発見する、あるいは歴史社会学のコンテキストでトピックを発展させるという役割で、郷土史・地域史の研究者が活躍するべきだと述べている。つまり本書の細かい議論は、こういう人々に対するinvitationなのだろう。

 なお、話自体はきわめてエキサイティング。ローマ帝国が帝国全域に張り巡らした道路のようなものが、古代日本においても存在し、律令国家の衰退とともに消滅したが、いまでもその痕跡があちこちに見られるという話である。とりわけ、この「消滅した」というところに、『エンディミオン』的なSF的想像力をそそられた。ひょっとしたらこれが「古代のロマン」というやつなのか。

2000/7/21

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