超少子化

危機に立つ日本社会

鈴木りえこ / 集英社 / 00/07/22

甘い不徹底な本

 著者は電通の社員で、「少子化への対応を考える有識者会議」の「家族に夢を」分科会委員と、中央教育審議会の「少子化と教育に関する小委員会」専門委員を務めている人だが、「有識者会議」にはこういう人が参加しているのかと暗澹たる気持ちにさせてくれる本ではあった。中途半端なラディカル・フェミニズム系の進歩的知識人という感じで、思考が徹底していない。こういうのと比べると、フランシス・フクヤマの『「大崩壊」の時代』が筋の通った本に見えてくる。

 目標はいったい何なのかをはっきりと見据える必要がある。(1) 少子化の歯止め、(2) 日本経済の発展、(3) 準社会主義的な平等社会、(4) 女性の社会進出、(5) ゆとりある安心できる社会。これらの目標の間には相容れないものがある可能性があり、どこかでバランスを取らなくてはならないはずなのだが、著者にはこの種のトレードオフが存在する可能性があるという観念がまったく欠けているように思われる。

 もう1つ。この手の論者には社会ダーウィニズムの臭いがする。なんというか、「社会進出」していて、「個が確立」していて、「男性と対等に働く」女性が子供を産まないこと、に危機感を抱いているという気配が濃厚なのだ。で、「社会進出」や「個の確立」や「男女平等」に逆行する議論をするわけには行かないから、結果として、女性全員がそういう戦略を取るべきだという主張に至っているというわけである。こういう論理というか心情のメカニズムを見せてしまうと、議論としてはそうとう弱くなるように思う。

2000/8/5

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