失踪する人々

岡崎昴裕 / 宝島社 / 00/06/23

★★★

けっこう良くできている人情話

 元私立探偵が失踪者探しのエピソードを語っている本。探偵の書いた本は、他に『盗聴 ここまでやっている!!』『哲学教授を辞めて探偵になった男』を取り上げているが、本書はテーマを絞っていることと、著者に文章力があることから、相対的には質が高くなっている。

 しかし、あまり話が広がって行かず、興味深い捜査テクニックというのもそれほどないので、全体としてよくできた人情話という感じ。

 ふと、「私立探偵」という言葉に興味を抱いた。「私立探偵」は一般にprivate detectiveの訳語と考えられていると思う。detectiveは警察などの捜査機関の捜査員/調査官などのことで、これをプライベートに営んでいるからprivateがついている。一方、「探偵」は、広辞苑(第四版)によると「(1)ひそかに他人の事情や犯罪の事実などをさぐること。また、それを職業とする人。(2)ひそかに敵の内情を探る者。まわしもの。おんみつ」。つまり、スパイ、エスピオナージュ、アンダーカバーなどの言葉に近い語感を持っているようだ。ちなみに、リーダーズ英和辞典では、"spy on sb('s conduct)"に「人(の行状)を探偵する」という訳語を付けている。このように、private detectiveと「私立探偵」の間にはずれがあり、privateを外したときのdetectiveはほぼ必ず「公立」であるのに対し、「私立」を外したときの「探偵」はやはり「私立」であることが多そうだ。private detectiveの同義語としてprivate eyeとかprivate investigatorがあるが、前者は「私立探偵」でOK、後者はカジュアルな場合は「私立探偵」だが、private investigatorという表現がprivate detectiveのformalないしPCな言い方であることが意識されている場合には「私立調査員」などにするべきだろうか。

2000/8/5

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