激震! 建設業界

業界の危機分析から主要企業の経営健全度まで

前原利行、田中久夫 / ダイヤモンド社 / 00/07/06

★★★★

建設業界の状態をわかりやすく記述している本

 著者らは『週刊ダイヤモンド』の特別取材班。建設業界の現状を解説し、主要企業のデータを付した本である。2000年8月の現在、ひとびとはゼネコンの大型倒産が始まるのをじっと待っているという感がある。本書はそのような事態に至った経緯を、具体的なケースをベースにしながら解説している。ジャーナリズムが機能しているように思えて、私には面白かった。

 細かい説明も面白いが、著者が巻末に書いている「おわりに」という文章が的確で良い。ちょっと長くなるが最初の方を引用する。

建設業界を担当してほぼ1年。一番強く感じることは、この業界の特殊性である。
ゼネコンの社長に会って「貴社の強みは?」と聞くと、決まって「技術力だ」という答えが返ってくる。月に何回も技術に関する発表を行なう建設会社さえある。
だが、それらの技術を目一杯生かせるのは、民間工事のみなのだ。公共工事では、1社だけが保有する技術は採用されない。
ほとんどの場合、自社で開発した技術を他社に開示し、共有の技術になって初めて技術・工法が取り入れられる。技術の優位性が、まともに発揮できない業界なのである。
電機メーカーなら、新技術を盛り込んだ商品の発売で、市場を席巻することは可能だ。ゲーム機市場で後発のソニーが、プレイステーションで任天堂を凌駕したように。
だが、建設業界ではそうはいかない。彼らは、何のために技術開発にカネとヒトを費やすのだろうか。

 「業界の常識」の異常さは、その業界に属している人も頭では理解しているものだ。しかしどうしても体がついていかず、環境が変わり、常識が変わりつつあるときに対応に遅れが生じるのである。現状把握のためには、外部のジャーナリストや新規参入者の視点がどうしても必要になる。出版業界の問題は、ジャーナリストがそもそも出版業界に属していることにある。

2000/8/12

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