宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる

疾風怒涛の宇宙論研究

Lonely Hearts of the Cosmos

デニス・オーヴァーバイ / 白揚社 / 2000/05/15

★★★★★

エキサイティングな本

 ハッブルの弟子であるアラン・サンディジの研究生活を軸に、1990年代までの宇宙論の変遷を、諸々の研究者に焦点を当てたドキュメンタリー風の記述で紹介していく本。数式の出てこない一般向け啓蒙書で、細かいところがまったく理解できなくても面白く読めるという驚異的な本であった。正直いってもうちょっと具体的な内容に踏み込んだ解説があってもいいんじゃないかと思ったが、それをすっとばしても面白く読める本に仕上がっているということが驚きだ。なんか「シリコン・バレーのベンチャーの旗手たちを扱った風雲録」とか「自民党代議士たちの暗闘を描いた実録物」を連想させる部分もないわけではないが。

 アラン・サンディジを中心に据えていることからわかるように、全体的なストーリーは、「いくつもの理論が盛衰するなかで、観測者、古典的な天文学者として地道な研究に邁進していたサンディジの名声も何度となく上下に変動したが、最終的には地道な研究が勝利を収めた」というものである。彼といろんな面で対立した研究者たちの言い分も十分に掬い上げられていて不公平な感じはしない。

 時期的な問題もあってか(日本語版の出版は2000年だが、原著の初版は1991年に発行)、超ひも理論と(とりわけ)古典的な天文学の対立関係(そういうものがあるんであれば)に関する記述が少ないのがちょっと残念だった。

2000/8/19

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