日本の階層システム1

近代化と社会階層

原純輔編 / 東京大学出版会 / 00/06/15

★★★★★

まあ真面目な研究

 東京大学出版会から出た『日本の階層システム』シリーズの第1弾。全6巻予定で、1「近代化と社会階層」、2「公平感と政治意識」、3「戦後日本の教育社会」、4「ジェンダー・市場・家族」、5「社会階層のポストモダン」、6「階層社会から新しい市民社会へ」となっている。本書はSSM調査データをベースに、さまざまな統計資料を使って、近代日本の社会階層のいくつかの側面を論じた論文集である。『不平等社会日本』からの流れで読んでみた。

 扱われているトピックが幅広いため、さまざまなアイデアの宝庫ともいえるが、結果として浮かび上がってくる全体像はきわめて複雑である。この分野の研究者ならば自明なことなのかもしれないが、門外漢の私は、この手の社会調査のベースとなっている職業階層区分(大企業ホワイトカラーとか中小企業ブルーカラーとか自営など)の特性を、現実にマッピングするのに困難を覚えている。

 おそらくこういう研究はすでに行われて、この分野では当たり前のことになっているんだと思うが、(1) それが、他の国で階層とされているとか、外形的に分類しやすいというだけでない、何らかの妥当な理由で1つの階層として認知できること、(2) それをそれ以上の複数の階層に分割することができない(分割してもしかたがない)こと、(3) 個々の階層がだいたい同じ粒度になっていることの3点がはっきりとしていないと、本書に掲載されているような研究を納得して体に染み込ませるのは難しい。第3章「自営業層の戦前と戦後」では自営業層について(1)の要件を検証しているが、(2)の要件は検証していない。また、日本のあらゆる自営業者を1つの層として捉えるのは、大W上と大W下を区別する粒度に合っていないような気がする。

 たとえば『不平等社会日本』は「ホワイトカラー上層という階層の世代間再生産が強い」と述べるが、これは実は日本の雇用習慣の下では、「親が高い地位にあればその子も出世しやすい」というアナログな言い方でも構わないような現象である。ホワイトカラー上層とホワイトカラー下層という社会階層をたまたま想定しているからこれが「社会移動」として認識される。一方、自営業はすべて1つのカテゴリーとされているので、自営業の中でのより「デジタル」な社会移動は(あったとしても)いっさい認識されない。まあ、こうした「階層」を完全に操作的な定義として受け入れ、各階層の属性の違いからたしかにその定義には「実体」がある、というような流れに話は進んでいくんだと思うんだが。

2000/8/19

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