台湾人と日本精神

日本人よ胸を張りなさい

蔡焜燦 / 日本教文社 / 2000/07/15

★★★★

困惑

 著者は1927年生まれの台湾人。台湾財界の有名人で、司馬遼太郎の『台湾紀行』(未読)のエピソードに登場する人。金美齢による紹介文がある。タイトルの「日本精神」には「リップンチェンシン」というフリガナが振ってある。皮肉な事情から、大日本帝国の純朴な軍国少年魂が、台湾で温存されていたというケース。本書は日本語で書かれているし、李登輝とは日本語で会話をする仲だそうだ。

 『日本に恋した台湾人』は新しい世代のアンビバレントな親日家による本だったが、こちらは年季が入った熱狂的親日家。この2人の中間に位置する反日的な台湾人の本がぜひ読みたいものだが、なかなか良さそうなものが見つからない。

 こういうのは本当に困る。日本人の代わりに、日本を対象に憂国してくれているのである。ハードコアを聴いているアメリカ人青年が、日本にやってきてプレスリー・マニアに出会ってしまったときの心情というべきか。石原慎太郎とか西村真悟を誉め称えられてしまうと(246ページ)こちらとしては困るんである。アメリカ人がパット・ブキャナンを誉め称えられてしまったときの心情というべきか。でまあ、皮肉な言い方はいろいろとできる。国民党体制下で日本との貿易を通して蓄財した財界人だ、とかね。しかし、本書に書かれているような個人的な体験記を読むと、この世代の台湾人に対してそういうことを言うのも何だかなあという気がするんである。台湾の民主化によってようやく一息つけた人々であるわけだし。

2000/8/26

 2001年に、本書は版元の都合で販売中止となったという(『入国拒否』)。具体的には、日本教文社とその背後にある「生長の家」が、このように政治的主張の強い本を出していることに怖くなったということのようだ。台湾と日本の両方でテンションが高まっている。

2001/7/26

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