マクロ経済政策の課題と争点

吉川洋、通商産業研究所編集委員会 / 東洋経済新報社 / 00/04/20

★★★★★

面白い

 通産省通商産業研究所の機関誌『通産研究レビュー』の特集号だとのこと。1999年にポール・クルーグマンを招いて開かれたカンファレンス「日本経済の回復とマクロ政策の課題」の議論の再現と関連論文を収録したもの。特集Iの「日本経済の回復とマクロ政策の課題」は、クルーグマンの提唱している「日本は流動性のわなに陥っており、日銀はインフレ政策をとるべきである」という案についての議論を集めている。特集IIの「バランスシート再建の経済政策」は、バブル崩壊後の日本経済の状況をバランスシートの毀損という観点から分析し、これを解決するための政策提案をする議論を集めている。

 特集Iのインフレ政策については、賛成と反対の両方の立場からの多様な意見が寄せられており、一読者としては「要するに結論は出ないわけね」という感想しか出てこなかった。これらの議論を概括している小林慶一郎の「マクロ経済政策の論争と価値判断」は非常に明晰で面白く、テクニカルな話に陥りがちな議論に1つの確固たる視点を提供してくれた。フレームワークとしてはちょっと粗すぎるのかもしれないが。

 特集IIについては、日本企業のバランスシートが毀損しているということ自体については論争の余地がないため、政策提言に重きが置かれている。世間で「構造改革」と言われていることの具体的な内容である。

 全体的な感想は、なるほどこれだけ議論が交錯していたら、積極的な政策を打ち出せないのもしかたがないというものだ。そうやって先送りしてきたのがまずいんだという説もあるわけだが、前述の小林慶一郎の論文は、この点にまで言及する懐の深いものだった。面白い本ではあるが、テクニカルな内容は専門的で、ちゃんと理解できた自信はない。

2000/8/26

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