裕次郎と日活アクション

20世紀のビッグスタア2

『平凡』特別編集 / マガジンハウス / 00/06/22

★★★★★

まあいいんだが

 『平凡』に掲載された写真や記事を再編集している写真集。『20世紀のビッグスタア』というタイトルで、(1) 「美空ひばり」、(2) 「裕次郎と日活アクション」、(3) 「銀幕の名花」、(4) 「絢爛! 時代劇まつり」、(5) 「燦めく歌星」、別巻「「平凡」お宝写真館」の全6冊が刊行予定されているが(もちろん全部買います)、本書はそのうちの2冊目。『お勧め映画第5回』の『日活プログラム・ピクチャー編』を書こうと思ったのは、本書を買ったのがきっかけであるが、あまり参考にはならなかった。目次から、取り上げられている俳優の名前を抜き出すと、石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎、宍戸錠、ニ谷英明、川地民夫、和田浩治、浜田光夫、高橋英樹、渡哲也。質の良い写真がたくさん載っているきれいな本である。

 『平凡』という雑誌は日本のサブカルチャーの流れを知るための資料として適しており、私は以前、古本屋巡りをしてこの時期のバックナンバーを収集していたことがある。この手のアイドル情報誌をリアルタイムで買うことはまずないのに、昔のものは買うというのはインテリの限界性の如実な表われ。洋画では『LIFE』が良いが、バックナンバーは手に入りにくく、『LIFE goes to the movies』(だったと思う)という写真集が役に立った。ティーン・エージャーの頃の良い思い出である。

 本書は、最初に書いたように男優中心の構成になっている。これは日活に限らず、当時の映画会社のスター・システムが男優中心であったがゆえのことで、この事情はハリウッドの黄金時代でもそれほど事情は変わらない。女優は一般に添え物として扱われ、本質的に女性が主人公にならざるをえないもの(『若草物語』(1964)など。ちなみに芦川いづみ、浅丘ルリ子、吉永小百合、和泉雅子)、吉永小百合などのごく一部の大スターに格下の俳優があてがわれるもの(浜田光夫とのコンビは女性の方が格上という珍しい例。裕次郎と北原三枝のコンビは、すぐに主客が逆転した)、女性中心の文芸映画(『お勧め映画第5回』の蔵原惟繕の項を参照)、そして末期の一部のニューアクション(『お勧め映画第5回』の長谷部安春の項を参照)を除けば、主役級の男優が企画の中心となって映画が作られていた。これは当時の事情であってしかたがないことだが、2000年に生きるわれわれは、もうここから脱却してもいいのではないかと思う。

 本シリーズはこれらの大衆文化を懐かしく思うような年代の人々をターゲットにした企画だろうから仕方がないとはいえ、現代の人間が石原裕次郎、赤木圭一郎、浜田光夫などに改めて魅力を感じるかというと難しいはずだ(小林旭、宍戸錠、川地民夫、渡哲也には十分に商品価値はあると思うが)。一方、日活に限ったことではないが、この時期の女優たちの美しさはいまでも十分に通用するし、現代人の間での需要を掘り起こすことが可能に違いない。日活では芦川いづみ、笹森礼子、吉永小百合、松原智恵子、山本陽子、大原麗子など、それ以外では団令子、浜美枝、桑野みゆき、久我美子、酒井和歌子、野川由美子など、ちょっと路線が違うが渡辺美佐子、淡島千景、山本富士子などのきれいな写真を載せた写真集が出たらかなり受けると思うし、そこから日本映画のリバイバルを仕掛けることも不可能ではないと思う。というようなことをもう10年以上も思っているんだが、やっぱり無理なんでしょうか。ちなみに、この手の女優たちの出演映画が「ロリコン」のコンテキストで密かなブームを呼んでいるという話を聞いて愕然としたことがある(『緑はるかに』とか『乳母車』とか『月曜日のユカ』とかの上映会がこっそりと開かれているらしい)。

2000/9/2

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